身近な日常をやんわりデータサイエンスしてみよう

身近な情報や現象からデータを取り出して解析してみます。

YOASOBIのYoutube動画のコメントと Google Trendsの地域別インタレストで視る国際性

背景

 YOASOBIは、2019年に結成された日本の音楽ユニット。ボーカルのikuraとコンポーザーのAyaseからなる2人組で、小説を原作にした楽曲を制作しています。ソニーミュージックが運営する小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説を音楽にするプロジェクトから誕生しました。そのコンセプト、ローマ字でのユニット名、English versionのMVなどからは、小説、アニメ、J-Popsなどの日本のカルチャーを基盤として楽曲を制作して、世界へも発信して行こうと言う強い姿勢が伺えます。Official Music Videoはすべてアニメーションなのも大きな特徴です。

 2019年10月に1stシングル「夜に駆ける」をリリースし、今年の8月で通算15作が累積ストリーミング回数が1億回を超えていて、その人気は国内外へと広がっています。

 2023年4月20日にリリースされた最新曲の「アイドル」は、TVアニメ「推しの子」のオープニングテーマに起用されています。初めて視聴したときは、「何だこの曲は!?」、と思いました。様々な要素が目まぐるしく盛り込まれていて、でも時間にしてわずか3分46秒。リリースされると瞬く間に日本の各ミュージックチャートで首位を走り続けています。世界的にも、米ビルボードのグローバルチャート「Excl. U.S. top 10」(6月10日付)やYouTubeの「music charts TOP 100 songs Global(世界楽曲ランキング)で首位を獲得しています。

 楽曲の分析だけでなく(「アイドル」に関してはYouTubeに沢山楽曲の分析がアップされています)、YOASOBIに関する様々なデータが業界のみならず多くのシティズンデータサイエンティストが分析しているのではないかと思います。
例えば「アイドル」のリツイート分析については、詳細な分析が紹介されています。
note.com

 ここでは、YOASOBIの世界的なインタレストの広がりをGoogle Trendsの地域別インタレストとYouTubeのMVに投稿されているコメントの言語種で可視化してみました。

YouTubeデータの取得について

 筆者はデータサイエンスには安価なHPのChromBookを使ってGoogle Colaboratoryでプログラムの作成と実行を行っています。Google Colaboratory上で実行環境設定ができるので、大きなデータでDeep learningする場合でも趣味程度であればChromBookで十分です。
 Youtubeのデータの取得にはGoogle CloudのYoutube Data API v3を使用します。

 データの取得と分析の主なフローは下記のとおりです。プログラミングはPythonを使っています(プログラムはプログラミング交流サイトのqiitaに後日投稿予定)。

  1. YouTube Data API v3にアクセス
  2. チャンネルAyase / YOASOBI のチャンネルにある各動画データを取得
  3. 各動画のコメントを取得
  4. 取得した各コメントを言語判定
  5. 各動画の総コメント数と日本語以外の言語でのコメント数の比率を計算
  6. 適宜Plot

3つの「アイドル」MVコメントの言語

各MVの基本データ

 4月20日にリリースされた「アイドル」のMVには、以下のOfficial Music Video、English Ver.、Arena Tour live の3つのMVがあります。3MV合わせて3ヶ月少しですでに視聴回数3億回を超えています。まずこれらMVの以下の基本データを取得します。
viewCountは視聴回数、likeCountは”いいね”回数、commentCountはコメント数、publishedAtはMVの投稿日時、IDは動画IDです。動画IDでコメントの詳細データを取得することができます。

title viewCount likeCount comment
Count
publishedAt ID
YOASOBI「アイドル」 Official Music Video 267,474,693 3,344,778 111,348 2023-04-12T15:30:09Z ZRtdQ81jPUQ
YOASOBI「アイドル」(Idol) from 『YOASOBI ARENA TOUR 2... 28,388,917 512,401 11,286 2023-06-28T09:00:14Z RzXTe-QfWTw
YOASOBI / Idol (「アイドル」English Ver. ) 23,694,413 714,836 19,104 2023-05-25T15:00:08Z RkjSfZ30GM4





総コメント数に対する外国語比率

 Official MV とarena live MVでも外国語比率が40%程度とすでにかなり多いですね。海外からの視聴比率も40〜50%だそうですので、コメント数の比率と相応しています。
 English ver. では外国語のコメント比率が56%とOfficial MVの1.44倍増加しています。

コメント外国語内訳

 外国語でのコメントの内訳を見てみました。official MVと English ver. では約50%が英語で、中国語と韓国語が10%前後で続いています。Google Trendsでの各国の検索ボリュームデータから推測すると中国語は香港と台湾からのコメントと推測されます。スペイン語が5%程度あり、ロシア語もチラリと見えます。スペイン語は南米もありますが、フィリピンでも良く使われているそうです。arena liveではやや違う傾向で、英語の比率が69%と増え、中国語と韓国語の比率がスペイン語より低くなっています。理由が気になるところです。
* en:英語、ko:韓国語、zh:中国語、es:スペイン語、ru:ロシア語 (SO 639-1言語コード

各MVコメントの外国語内訳円グラフ

「アイドル」がリリースされた4月20日以降のGoogle Trendsの地域別のインタレス

 日本以外でインタレストの高い国の上位は、香港、台湾、韓国、シンガポール、フィリピンなどでした。Youtubeコメントの言語種と相応しています。埋め込んだ図の右下をクリックするとリスト表示に変わります。(ブラウザによっては表示されません)


Google Trendsに地域別インタレストで表示された国数の推移

 YOASOBIのデビュー以降の3ヶ月ごとのGoogle Trends地域別インタレストに表示される国数をプロットすると、2021年末には30カ国前後に拡大していて、「アイドル」の世界的なヒットの地盤ができていたことがわかります。

インタレスト国数推移
地域別インタレスト推移gif

YOASOBIの全てのOfficial Music Videoのコメント数と外国語比率を可視化

コメント数では、「夜に駆ける」と「アイドル」が圧倒的で10万を超えています。外国語率では「海のまにまに」が最も高く55%を超えています。

official MV コメント数に対する外国語比率

外国語比率の最も高い「海のまにまに」Official MV コメントの外国語内訳

 「海のまにまに」は四人の芥川賞作家による「はじめての」プロジェクトで辻村深月さんの小説「ユウレイ」をもとにした楽曲です。

 外国語のコメントの内訳は英語が約60%で以下、中国語、スペイン語、韓国語、インドネシア語と続いています。スペイン語はフィリピンからのコメントと推測されます。
 英語の評価の高いコメントでは、”the MV is top tier when you can use every frame as a wallpaper”、”Had the pleasure to do animation on this MV hope everyone enjoyed it! ” とあるようにアニメーションへの評価が大変高いです。

「海のまにまに」コメントの外国語内訳"

English ver.のMVについてコメント数と外国語比率を可視化

 「優しい彗星 English ver.」が73%と非常に高い外国語率でトップでした。

English ver. コメント数と外国語比率

外国語比率の最も高い「優しい彗星 English ver.」のMVの外国語内訳を見てみる

 なぜか、英語比率が73%と非常に高く、韓国語の比率が小さくなっています。Google Trendsの地域インタレストには韓国は入っておらず、何らかの制限があったのかもしれません。日本でのインタレスト100に対して香港と台湾でのインタレストがそれぞれ70、46と非常に高いのが、外国語比率、特に英語の比率が高い理由のようです。
 最も評価の高いコメントには、"The song itself describes how the story goes on." とあるように英語版は海外の方にはより分かり易くなったようです。アニメーションへの評価も高いです。

「優しい彗星 English ver.」の外国語コメント内訳

感想

 YouTubeにはGoogleの公式のAPIApplication Programming Interface)、YouTube Data API v3があります。今回このAPIを使ってYOASOBIのYouTube MVのコメントデータの分析をしてみました。Google Trendsのデータも併せて国際性に注目してみました。 コメントの内容については、自然言語処理を使えばさらに分析できるでしょう。
 YOASOBIのビジュアルを表に出さずに、Official MVにアニメーションを採用していること、それらのEnglish ver. も制作していることでJ-POP、アニメ、小説などのJ-カルチャーを海外へ発信するプロジェクトになっています。
 今後は海外でのライブに注目です。YOAOBIはアメリカを拠点とする、アジアのカルチャーシーンを世界中に発信するメディアプラットフォームである88risingが主催するイベント「Head in The Clouda」のジャカルタ公演とマニラ公演に昨年2022年12月出演していますが、今年は8月5日〜6日のロスアンゼルス公演に出場しているはずです。 米国では特に「アイドル」でYOASOBIへのインタレストが数倍高まっていますので注目です。